大切なあなた

再会は・・・

「荒川主任、本当にいいんですか?」

今年入った新人の高山さんが不安そうな顔をしている。

「ええ。向こうの事務所からも特別なリクエストはなかったでしょ?」
「そうですけれど・・・」

今、私と高山さんが悩んでいるのは来月のイベントのためにやって来る影近の宿泊先について。

「もっとオシャレなリゾートホテルとか、露天風呂付の高級温泉宿とかあるじゃないですか」

きっと、私が選んだフツーのホテルじゃ納得できないって言いたいんだろうな。

「いいわよ変更して。ただ、先方にも一応確認してね」
「はい」
高山さんの声が急に明るくなった。

「そうだ、食事は付けない方がいいわ。彼凄い偏食で食べれるものの方が少ないから。好きにしてあげた方が喜ぶはず」
「はあ」
あら、また顔が暗くなった。

ったく、わかりやすい子。
社会人1年目で有名人の接待を任されれば、高山さんでなくても色々とやりたくなるはず。その気持ちは私にもわかる。でも、彼はそう言うのを嫌うから。

「影近の事務所に聞きながら、なるべく希望に沿ったものを用意してちょうだい。私には最終的に決まったものを見せてくれればいいわ」
「はい」

後はあなたに任せたわと言うと、再び笑顔に戻った高山さんがうしそうに自席に戻って行った。
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