お見合い婚にも初夜は必要ですか?【コミック追加エピソード】
4.私の最推しは旦那様



どうしてそんな意地悪なことが言えるんだろう。私は唇を噛みしめ、高晴さんを睨んだ。
せっかく兆徹くんの朗読劇に一緒に行ったのに。挨拶をしたら、高晴さんは不機嫌になってしまった。兆くんに不愛想で失礼な態度を取った彼は、もし嫉妬だとしても子どもみたいだ。さらには私の浮気を疑うようなことを言うなんて。
そんな嫉妬をする資格があなたにあるの?
私はスマホを握りしめ、苛立った口調で言った。

「年末、忘年会で女の子のいる店に行かなかった? 酔って河合さんたちに運んでもらった日」
「え……」

高晴さんが狼狽した顔になる。ほら、心当たりがあるんじゃない。

「どれだけ女の子と接近したのか知らないけど、ワイシャツに口紅やファンデーションがつくまでってよっぽどだからね!」

私は怒りを込めて、スマホに保存してある写真を見せた。洗濯機の前のワイシャツの画像だ。見せるつもりはなかったけれど、こうなれば引けない。言い逃れなんかさせるものか。

「口紅……」
「そう、口紅! 妻がいる身で、近づきすぎだとは思わないの?」
「……これ、河合だ……」
「へ?」

私は間抜けな声をあげ、高晴さんの顔を覗き込んだ。
高晴さんはいそいそとスマホを取り出す。そして画面に映したのは、河合さんの姿。女性社員にお化粧され困っている姿が一枚目。次はロリータなワンピースを着ている写真。さらにみんなと寄り添って写真を撮りまくっている写真……。日付はあの晩だ。

「高晴さん……これ」
「上司提案のゲームで、負けたヤツがこれを着るってことになって。それで河合が……」
「悪趣味過ぎない?」
「俺もそう思うよ。しかもこのワンピース、上司の私物でね。五十代の別部署の男性なんだけど、何に使うのか……」

本当に何に使うんだろう。趣味は自由だけど、それを部下にまで強要したらパワハラじゃないのかなあ。
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