秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
幸せな新婚生活
 翌日になって、三人そろって加奈子さんを訪ねた。
 大雅と籍を入れて一緒に暮らす報告をすると、自分のことのように喜んで祝福してくれた。

「まあ、そうなのね! ふたりとも、おめでとう。――陽太君、よかったわねぇ。これからはパパも一緒にいてくれるのね」

 少しかがんで陽太の頭をなでる加奈子さんの姿は、まるで本当の祖母のようだ。

 その後、婚姻届の保証人のお願いをしたところ、「私でいいのかしら?」と迷いを見せたものの、「ぜひお願いします」と大雅の後押しもあって「頼ってもらえてうれしいわ」と記入してくれた。

「加奈子さん、今まで本当にお世話になりました」

「いやだわ、そんなに畏まっちゃって。あなたと過ごせて、私も本当に楽しかったわ。それに、きっとまたどこかで会えるわよ」

「絶対に、遊びに来ますから。メールだって、送りますから」

 互いの瞳に浮かんだ涙は、この数年間の付き合いの深さの表れなのだろう。
 大雅からもこれまでのお礼を伝え、この後片付けと荷物の運搬で騒がしくなることを詫びた。

「それなら、その間は陽太君を預かっていようか?」

 さすがに図々しくないだろうかと迷っていると、加奈子さんがさらに続ける。

「孫とのお別れする時間がほしいのよ」

 私が遠慮しないように、そんな言葉をかけてくれる彼女だからこそ、心の底から信頼してきた。

「それじゃあ、お願いします」
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