ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
「ヴィニーシア様のことは、真正面から見たくなかったので。黒い髪だけ見れば十分ですよ」
「シアのことは?」
「あなたに近づく女性は、警戒すべきですからね」

 しれっとしてヨアキムは言うが、それはそれでどうなのだ。
 二人とも黒い髪に目を奪われ、そこから先はまったく見えていなかったというわけだ。呪いのせいで体調が悪かったと言うのは、言い訳でしかない。

「まずは、ポーション職人のシアに礼をすべきだな」

 真正面から顔を合わせたら、彼女はエドとエヴァンドロが同一人物であるのに気付くだろうか。そうしたら、改めて謝罪をする機会を得られるよう頼んでみよう。

 だが、エドのその目論見は成功しなかった。
 ベラの店を通じてシアに王宮に来るよう連絡したら、礼なんていらないと言われたのだ。ポーション職人として、できることをしただけだから、と。
 シアらしいと言えばらしい。

「――しかたないな」

 ヨアキムの前で、エドは苦笑する。

「ヨアキム、女性はなにを贈ったら喜ぶ?」
「それを、俺に聞きます?」

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