恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
6、彼はキス魔?
「う……ん」
ピピッとなにか電子音がして目を開けたら、目の前に一条くんがいて固まった。
一条くんの手には体温計。
彼はスーツのジャケットとシャツを着ていて、体温計の表示を確認すると、私に目を向けた。
「おはよう」
 柔らかな笑みを浮かんで挨拶する彼を見て呆然としながら、機械的に言葉を返す。
「おはよう……ございます?」
 ええ……と、なんで一条くんがいるの?
 それに……ここどこ?
 前に泊まったホテルの寝室くらい広い部屋だし、ベッドもキングサイズくらいありそう……。
 一瞬ホテルかと思ったけれど、壁に山や海、花の写真が飾られていて、奥にあるガラスケースに一眼レフカメラが五台綺麗に並べて置いてある。
「ここ……一条くんの家?」
 戸惑いながら尋ねると、彼は小さく頷いた。
「そう。俺の家で、ここは俺の寝室」
「あの……歩は?」
 昨日一条くんがアパートに助けに来てくれたのは覚えてるのだけれど、その後の記憶が飛んでいる。
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