断罪された公爵令嬢は元婚約者の兄からの溺愛に囚われる
18.一生お側に
 

「ヴィー!! いるか!?」
「ジャック、さま……?」

 突然現れたジャックさまに目をぱちくりさせると、勢いよく駆け寄られて。瞬く間にジャックさまの胸の中に閉じ込められた。ジャックさまを見上げると珍しく焦りが滲み出ている。

「あの……?」
「――よかった……。ヴィーが俺から逃げたかと思って、心配した」
「ふふ。急にどうされたのですか?」

 きっと急いでここまでやって来られたのだろう。いつもより体温が高いジャックさまの胸に擦り寄るととっても安心する。ふんわりと良い香りを空気と一緒に吸い込む。やっぱり、わたくしの居場所はここだ。

「わたくしがジャックさまから逃げるなんてことは有り得ません。ですが、どうして逃げたなどと思ったのですか?」
「……それは。ヴィーの所に潜ませている影から、裏口で何者かが密かに公爵家を出発したと聞いて……」
「!!!」

 秘密裏にルナ達を出発させたけど、それすらもジャックさまのお耳に入っているだなんて。わたくしはびっくりすると共に、ジャックさまの執着心を嬉しく感じてしまう。

「出発したのはルナとわたくしの侍女ですわ。今朝ルナが人間の姿に戻ったので、早めに公爵領へ送った方が良いかと思いまして……」
「!? そ、そうだったのか……。はあ、ヴィクトリアのことになると僕はどうも本当にダメだ」

 落ち込むジャックさまが愛おしくて、今度はわたくしからぎゅうっと抱きしめる。普段は冷静沈着なジャックさまだけど、わたくしことになると余裕をなくすお姿は、堪らなく愛おしい。

「仮にジャックさまが本当にダメだとしても、一生お側にいますわ」
「それじゃあ、今日から皇城に一緒に住んでくれる……?」

 捨てられた子犬のような目をしたジャックさまが眩しい。
 やっぱりルナの言う通り、今日から皇城に住むのは決定事項だったみたいね。

「はい、喜んで。どんなジャックさまであっても、お慕いしております」
「ほんとうに……? 僕が狂おしいほど君を愛して、閉じ込めてしまいたいと願っていても?」
「ええ。これから先も、ずっとジャックさまと添い遂げます。でも、閉じ込めるならば、側室などお迎えしないでくださいませね」
「ああ。僕はヴィー以外、他に何もいらないよ」

 その言葉に安堵しわたくしは自然と穏やかな笑みが浮かんだ。そのままジャックさまを見つめると、仄暗い眼差しに光が宿った気がした。



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