初恋の味は苦い

やらずに後悔よりやって後悔とは

朝、目を覚ますと端に追いやられ今にも落ちそうになってる掛け布団と、フカフカのマットレス、サイズの合わないぶかぶかのルームウェアで、ああ、ここはホテルだったんだと思い出す。

ゆっくり寝返りを打った先に異性の姿があり、そこで私は一気に目が覚めた。

祥慈。

祥慈がいる。

私、祥慈と一晩過ごした!?

まだ少しフラつく頭を整理して、昨日の出来事を思い返す。だけど、祥慈と飲んでる途中から記憶が曖昧だ。

ホテルにどうやって戻ってきたんだっけ。
なんだか手を繋いでた気がする。

私はゆっくりゆっくりベッドから降りようとしたが、さすがホテルのマットレス。振動がそのまま祥慈に伝わったようだ。

静かに祥慈が目を覚ます。

眠そうに私の方を見てきたので、「おはよう」と言ってみた。

「おはよ」

彼は目を擦りながら、寝返りを反対側に打った。

昨日、ドライヤー借りたんだっけ、それで・・・

少しずつ断片的に記憶が掘り起こされる。と、もう私は耐えられないほどの後悔と恥ずかしさに押し潰されそうになった。

「あ、そうだ」

祥慈がゆっくりとまたこっちを見る。

「りっちゃんさ」

重そうなまぶたを必死に開けて私のことを見据えた。

「もしかして初めてだった?」
「なんで」
「なんか、そうなのかなあと」

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