色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅰ

4,テイリーの考え

 テイリーは立ち上がると。
 こっちを見下ろした。
「いいですか、俺は貴女(あなた)を助けます。まずは、貴女は家を出る必要がある」
「…何で、助けてくれるの?」
 テイリーに助けてもらう理由が見つからない。
「…さあ、まずは家から必要な荷物だけ取りに行ってください」
 質問には答えてもらえなかった。
 家…と聞いて。
 ずーんと頭が重たくなる。
 帰りたくない。
「もう、戻れないよ」
「大丈夫ですよ。部屋に直接繋げるようにしますから。必要なものだけ持ってきてください」
 そう言うと、テイリーは再び私の手を引いて歩き出した。
 連れて行かれたのは、空っぽの校舎だった。
 昇降口は電気がついていないせいで真っ暗で。
 土足のまま、廊下に上がると目の前に扉がある。

「扉を開けたら、貴女の部屋に繋がりますんで。俺はここで待ってます」

 廊下にいきなり、扉が現れ。
 某猫型ロボットが使用している秘密道具に似たような扉だった。
 開けると、見覚えのある部屋だった。
「うわぁ…」
 と声をあげて、振り返ってヒューゴを見ると。
 ヒューゴは眉間に皺を寄せて「早く」と小声で言った。

 アイツ、魔力なんて持っていないとか言っていたくせに。
 騙してやがったなと。
 プンプンしながら、自分の部屋に入ると。
 急いで、荷造りをすることにした。

 部屋は静かだった。
 あ、そういえば家族は出かけているんだった。

 私は部屋をざっと見渡して。
 必要なものをカバンに詰めた。
 楽譜と、思い出のメトロノーム。
 通帳、カード…

 流石にピアノは持っていけないよなあと思い、
 そっとピアノを撫でて、「さようなら」と言った。
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