合意的不倫関係のススメ
EP.4「同罪」
ーー

その日私は、バックヤードの人目につかない場所に花井さんを連れてやってきた。

「花井さん。誰にでもミスはあるし、そこを責めたりはしない。だけど謝罪は大切なの。あなたの失敗で部長達がお客様のご自宅まで謝罪に行かれたのよ?そのことについて、きちんと謝った?」

それはたまたま、私が休みの日に起こった出来事だった。私お客様から受けた注文の発送作業を売り場で行った際、花井さんが商品にかけるのしを間違えてしまったのだ。

それもあろうことか、慶事のお使いものに弔事ののし紙をかけて発送してしまった。当然お客様から怒りの電話があり、すぐに食品部の部長と次長が揃って自宅にお詫びをしに向かった、

それが昨日の夕方だったのだけれど、なんと彼女は何も言わずに帰ってしまったらしいのだ。

「だって…責められて凄く怖かったんです」
「それは当然でしょう?ミスをしたんだから」
「でも三笹さんさっき、ミスは誰にでもあるって」
「だからって反省しなくてもいいわけじゃないから」

彼女は至極不服そうな顔で、髪を指で弄っている。何度言っても結んでくれない、明るい髪の毛を。

「とにかく、一度事務室に謝りに行って?」
「昨日あったことを今さらですか?」
「それは花井さんが…」

話が堂々巡りで、いくら諭そうがこの子には無理のようだ。普段からあまり仕事に身が入っていない子だとは思っていたけれど、まさかここまで酷いとは。

(どうでもよくなってきた)

結局のところ彼女は契約社員で、叱責されるのは私。花井さんをあまりきつく叱ると派遣会社に泣きつく恐れがあり、それが面倒なのだろう。

「これからは、確認作業はきちんと二人以上で行うこと。印鑑を押してもらって」
「分かりました」
「嫌かもしれないけれど、部長の所には謝罪に行くこと」
「はぁい」

花井さんの軽い返事を最後に、話は終了した。これ以上言っても時間の無駄だろう。

こんな話をした数分後に彼女お昼に行ってしまい、その神経の図太さに私は尊敬すら抱いてしまう程だった。
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