年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
15.
「なっ! 何でいるの⁈」

 このタイミングで、何故ここにいるのか、混乱した私は思わずそう声を上げる。
 来る前には連絡しなさいよって言ったのに、何で予告なく来ているのか。この様子じゃ、また夜遅く家にやって来て、私に激怒されていたに違いない。

「えーと。何でって、今日の朝着いて~、ブラブラしてたんだけど、どこも人が一杯だからここに来た」

 悪びれる様子もなく言う弟に、「そうじゃなくて! 来る前には連絡しなさいって言ったでしょ! いきなり来ても泊められないんだからね⁈」と私は怒りを露わに返した。

「あ、してなかったっけ。悪い悪い」

 頭を掻きながら軽く謝る真琴の隣の席を降り、奈々美ちゃんが私の元にやって来ると袖を引っ張る。

「咲月ちゃん。いいの? 一緒に来た人置いてけぼりだけど」

 私はそこで我に返って慌てて振り向いた。

「あ……の……」

 睦月さんは、呆然としたまま固まっているように見えた。

「何? 咲月の彼氏?」
「ちっ違うから!」

 こっそりと私に言う真琴に私はそう返して睦月さんの元に向かう。

「すみません。あの、弟……なんです。年末にこっちに来るとは聞いてたんですけど、まさか今日だなんて聞いてなくて」

 言い訳するように睦月さんに言うと、睦月さんはようやく表情を緩めた。

「弟。そっか、弟かぁ……」

 何故か自分に言い聞かせるように睦月さんは呟いていた。
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