年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
20.
「に……しても、元気だね。2人とも」

 芝生の敷かれた広いドッグランを、さっちゃんと奈々美ちゃん、そしてかんちゃんは寒さを物ともせず走り回っている。そんな微笑ましい様子を、併設されたカフェのテラスで眺めているのは男2人。

「……本当に」

 真琴君も頬杖を突いてそれを見ながら、呆れたように言っている。

「それにしても……いいなぁ。奈々美ちゃんは」

 つい愚痴のようにそんなことを言うと、真琴君は盛大に笑いながら俺を見た。

「睦月さん、相当嫌われてるみたいですね」
「いや……笑いごとじゃないでしょ……」

 俺は肩を落としながら真琴君にそう答えた。


 都会から少し離れた場所にある、広いドッグランとご飯が美味しいらしいカフェに行ってみたいとさっちゃんから言われたのは昨日。犬好きな奈々美ちゃんが、かんちゃんと遊びたいとリクエストして、さっちゃんが探したらしい。
 ドライブがてらちょうどいいか、と俺はニつ返事でOKしたわけだけど、大変だった。とにかく、ここに来るまでが。

 3人ともさっちゃんの家の近所にあるコンビニで待っていると言うから、午前中の少し早めの時間に向かうと駐車場にその姿があった。車を停めて俺が運転席から降りると、かんちゃんはまるで不審者を見つけたように鳴き出したのだった。
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