年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
22.
 その電話が鳴ったのは、1月2日の夜。
 そろそろさっちゃんを家に帰さなきゃなぁ……と思っていた頃だった。

 そう鳴ることのないスマホがソファの前にあるテーブルの上で震え出し、俺はさっちゃんに断ってそれに出た。

「何~?」

 相手は表示を見なくてもわかる。
 正月早々電話してくる人なんて限られているし、それに"向こう"の時間を考えれば、用件も察しがついた。

『よぉ、お前暇か?』
「暇じゃないよ~? 嫌だからね」
『は? まだ何も言ってねーし!』

 電話の向こうで司が不機嫌そうに返す。その声だけで、顔を顰めた司が思い浮かぶようだ。

「どうせ、明日空港に迎えにきて~! でしょ? 悪いけど俺、暇じゃないんだよね?」

 ソファに座ったままそう返す俺を、さっちゃんはハラハラした様子で伺っている。
 まぁ、今までだったら面白いから茶化しに迎えに行ってただろうけど、今はそんな事よりさっちゃんといるほうが大事だし。

『仕事……なわけねーよな、こんな正月に。それ以外でお前から暇じゃないなんて言葉初めて聞いたんだけど?』
「ま、俺にも色々あるの! お土産話はまたゆっくり聞かせてよ」
『しゃーねーな、ったく! ……そーいやレイから伝言』

 迎えを諦めたのか投げやりに吐き捨ててから、思い出したように司は続けた。
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