年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
30.
 今日は色々驚きっぱなしだった。

 まず、さっちゃんの田舎だ。
 昔……15年ほど前、司と来たことのある場所だったことに、空港に着いて気が付いた。来たのは1度だけ。しかも、当時付き合ってた彼女に振られて落ち込む俺が言った、『海が見たい』の一言で飛行機に乗せられ連れて来られた場所。
 その時も空港から海沿いを走り、海の見える展望台へ寄ってみた。まぁその時……色々あったんだけど。そして、さっちゃんの実家はそのすぐ近所だったって言うことも驚きだった。

 だけどそれ以上に今、とにかく驚いていた。間違いなく、今まで生きてきて一番だと思うくらい。

「じゃあ、学のお嬢さんが、睦月の噂の彼女ってわけか」

 久しぶりに会う父さんが、未だに怖い顔をしているさっちゃんのお父さんの横でそう言う。けれど父さんは、なんでそんなことになっているかなんて知るはずもなく、カラカラと笑っている。

 さっちゃんのお父さん……学さんは、聞いていた以上に怖かった。任侠映画に出てきそうな迫力に、さすがの俺も気後れしていた。そんな学さんに、さっちゃんは必死に自分の心のうちを叫んでいた。

 正直、俺はとてつもなく感動してて、その場でさっちゃんを抱きしめたいくらいだったけど、まさかの父さんの登場に全て吹き飛んでいた。
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