年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
6.
 車はすっかり暗くなった夜の街を抜けて、落ち着いた住宅街へ向かって行く。遅い時間に感じてしまうのは、冬だからなんだろうなと時計を確認すると8時前。それでも、テーマパークに着いたのが3時前だったことを考えると、それなりに時間は経っていた。

 明日からさっちゃんは実家に帰省すると聞いていた。あまり遅くならないようにしようと思っていたけど、本当はもう少し一緒にいたいな、なんて思ってた。
 けれど、ずるずると引き留めるわけにもいかず、ある程度の時間になったら帰ることを提案した。俺から言わなきゃ、さっちゃんは遠慮して言い出せないだろうし。

「そろそろ帰ろうか」

 そう言った時、寂しそうな顔を見せたのは、俺に対してじゃなくて、テーマパークを去る事に対して……なのかも知れないけど、それでも勝手に期待してしまう。
 またこうやって、一緒に過ごしてくれるかな? って。

 そんなことを考えながら、ハンドルを動かして、時々助手席で眠るさっちゃんの顔を盗み見た。
 俺が買ったテディベアを大事そうに抱えて、シートに凭れて眠るその顔を間近で見てしまったら、理性を保てる自信はない。

 ほんと、40がそこに見えてるおっさんが、20代の女の子に思う事じゃないよなぁ……
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