離婚前提から 始まる恋

里佳子さんの意地悪

実家でも、父には何人もの秘書がいた。
公設秘書や私設秘書、父のスケジュール管理などの身の回りのサポートをする人や、政策や法務にたけて活動する人。色々な立場で父をサポートする秘書が大勢いた。
特に父の近くで行動を共にする側近のような人とは母も密に連絡をとっていて、親しくもしていた。
妻と秘書はそういう関係になるものだと思っていた。
しかし・・・

「明日からの出張は、香港に10日間?」
「ああ、順調にいけばその予定だ」
「荷物の準備、手伝いましょうか?」
「いや、いいよ。自分でできるから」
「そう」

数日前になって急に決まった海外出張だからって、勇人が荷造りできないと思っているわけではない。
行き先と何日間の予定かしか聞かされないことに不満はあっても、文句を言うつもりは無い。
ただ私は、妻の務めとして出張の荷物くらいは用意しようと思っただけ。
それを自分でやるよと言ってくれる勇人は立派だと思うけれど、私としてはそこに距離を感じてしまう。
もう少し私に任せてくれればいいのにと思うのは、私のわがままだろうか。
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