冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

好きな人



あれから数日後――。
私は一昨日から国内線のフライトに出ていて、駆さんと顔を合わせていない。

(つ、疲れた……足がパンパン)

長崎空港から伊丹空港へ飛び、羽田空港に戻って来た。やっと退勤だ。
久しぶりに真由子と乗務が被り、心なしか疲れが軽減されたような気がするけれど。

「ねー安奈。三日連続勤務だっていうのにお肌つやつやだよね? 化粧品でも変えた? もしくは旦那さんとラブラブなの?」

シップを降り、通路を急ぐ。フライトバックをひきながら、真由子が茶化すような顔でこそっと耳打ちしてきた。

「全然だよ、そもそも彼は仕事が忙しくて家にいないし」

「じゃあなんでこんなとぅるっとぅるなのっ。なんか変わった!」

ツンとほっぺを突かれて、むっと頬を膨らます。

「し、知らないって」

本当に見当がつかないから、そう言うしかない。
何かあったといえば、駆さんとの外食を気にしていることくらいだろうか。
いつお店を相談されるのかとか、日程はいつになるのだとか。

(まだ暑いけど、秋服買ってないしな~。いい機会だし、買い物でも行こうかな)

洋服どうしようとか、髪型どんな感じにしようとか。
そんなことばっかり考えているのは、自分らしくない。
これが真由子のいう、『変わった』なのかもしれない。
< 87 / 145 >

この作品をシェア

pagetop