※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***


 それから数日後のこと。
 キーテとデルミーラは、二人の父親であるヒエロニムス伯爵と対峙していた。


「お父様、大事なお話って一体なんですの?」


 ヒエロニムス伯爵は小さく息を吐くと、二人の娘を交互に見つめた。


「実は、べーヴェル侯爵家の三男から、キーテに縁談を申し込まれている」

「えっ……?」


 キーテの心臓が大きく跳ねる。興奮と感動で、胸が一杯だった。


「キーテはどうしたい? 病弱なお前を妻にと言ってくれる人は、早々現れないだろう。
ただ、相手は三男で、侯爵位は継げない。分家筋の爵位を継ぐことになるらしいが、それでも構わないとお前が言うなら――――」
「ダメよ!」


 声を上げたのはデルミーラだった。目を見開き、信じられないといった表情で妹のことを見つめている。


「姉さま?」


 普段温厚で取り乱すことのない姉の様子に、キーテは面食らってしまう。


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