※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
二人はやがて、小高い丘の上にゆっくりと降り立った。
泉のほとり。色とりどりの花々が咲き乱れる、美しい場所だ。月明かりが強いお陰で、夜でもハッキリと景色が見える。
「綺麗……!」
「そうだろう? キーテなら絶対気に入ると思ったんだ」
エルベアトはそう言って、背負っていた荷物を下ろす。中には、白いキャンバスと、色とりどりの絵の具が仕舞われていた。
「前に言ってただろう? もっと色んなものが見て見たい。屋敷からじゃ見えない景色が描いてみたいって。
ここじゃ描きづらいかもしれないけどさ、折角だから画材も持ってきてみた」
絵画は、病弱なキーテでもできる趣味の一つだ。以前、せがまれて作品の一つを見せたことがある。
キーテにとっては、本当に何気なく口にした一言だった。それをエルベアトが覚えてくれていたことが嬉しくて堪らない。
「ありがとう、エルベアト様」
涙を堪え、キーテは力強く微笑む。
先程まで心を支配していた淀んだ感情が綺麗に無くなり、とても晴れやかな気分だった。
それだけじゃない。
温かな何かが満ち満ちて、今にも溢れ出しそうになっている。この感情を表現するのは、簡単なようで難しい。
一晩中、夢中でキャンバスに向かい続けるキーテのことを、エルベアトはずっと見つめていた。
泉のほとり。色とりどりの花々が咲き乱れる、美しい場所だ。月明かりが強いお陰で、夜でもハッキリと景色が見える。
「綺麗……!」
「そうだろう? キーテなら絶対気に入ると思ったんだ」
エルベアトはそう言って、背負っていた荷物を下ろす。中には、白いキャンバスと、色とりどりの絵の具が仕舞われていた。
「前に言ってただろう? もっと色んなものが見て見たい。屋敷からじゃ見えない景色が描いてみたいって。
ここじゃ描きづらいかもしれないけどさ、折角だから画材も持ってきてみた」
絵画は、病弱なキーテでもできる趣味の一つだ。以前、せがまれて作品の一つを見せたことがある。
キーテにとっては、本当に何気なく口にした一言だった。それをエルベアトが覚えてくれていたことが嬉しくて堪らない。
「ありがとう、エルベアト様」
涙を堪え、キーテは力強く微笑む。
先程まで心を支配していた淀んだ感情が綺麗に無くなり、とても晴れやかな気分だった。
それだけじゃない。
温かな何かが満ち満ちて、今にも溢れ出しそうになっている。この感情を表現するのは、簡単なようで難しい。
一晩中、夢中でキャンバスに向かい続けるキーテのことを、エルベアトはずっと見つめていた。