国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
16.彼女の真実
 こうやってフローラがクリスの屋敷にやって来ることも、何度目になるのかわからなくなっていた。
 クリスはいつもフローラの顔を見ると、嬉しそうにニコニコと笑顔を浮かべるし、彼の屋敷で働いている使用人たちも、どことなくそわそわとしていた。
 フローラがクリスの屋敷にやって来る目的の一つは、彼から魔法を教えてもらうこと。
 以前は三属性しか扱うことができなかった彼女だが、いつの間にか四属性の魔法を習得していた。つまり、彼女は特級魔導士と同等の実力を備えていた、ということだ。
 だがクリスはそのことをフローラには伝えていない。だからフローラ自身は、自分がクリスと並ぶ特級魔導士であることに気付いていない。
「あの、クリス様」
 いつもの裏庭でクリスと向かい合っていたフローラは、難しい表情を浮かべていた。それは、ジェシカの護衛として隣国へ行かねばならないこと、数日間会えなくなること、それをきちんと伝えなければならない、という気持ちがあったから。
 それと同時にクリスにお願いしたいことも。
「あの、私。ジェシカ様の護衛として、隣国のアリハンスに向かうことになりました。出立は四日後です」
 フローラがはっきりとそう口にすると、クリスの顔が歪んだ。
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