国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
26.冷たい部屋
 資料を見ながらノルトの話を黙って聞いていたクリスが、ふと視線をあげた。
「どうした、クリス」
 そのクリスの異変を感じ取ったのだろう。団長として、ノルトは尋ねたのだ。
「妻が、捕らわれた……」
 クリスがそう呟く。
「は? 副団長、結婚したんですか?」
「え、相手は二次元?」
「っていうか、妄想の中で?」
 部下たちの冷たい声が響いた。
「おい、クリス。まだ妻ではないだろう、恋人ではないのか?」
 ノルトの言葉に、ちっ、とクリスは舌打ちをした。
 まったくどいつもこいつも。特に、二次元と言ったこいつ、土魔法で生き埋めにしてやる、と鋭く部下を睨んだクリスだが、貴重な光魔法の使い手なだけにそれもできない。
「仕方ありません。婚約者で妥協します」
「っていうか、相手は二次元?」
「え、恋人? 婚約者? あぁ、だから副団長の魔力は安定していらっしゃるんですね」
 光魔法の使い手だけあって、部下ながら鋭い。だが、二次元は論外である。
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