国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
4.初めてのデート
 フローラは噴水の前で人を待っていた。もちろん待ち合わせの相手はクリス・ローダー。
 不思議なもので、いつの間にかフローラの休みの日の予定が決まっていた。その予定はもちろん、クリスと会うこと。お互いの住んでいるところも知らない二人は、周りの手腕によって、勝手に待ち合わせ場所と時間を決められていた。それが、関係者から関係者に伝わり、最終的には対象の二人に伝わる、という流れであった。
 実は、フローラがサミュエルと付き合っていた時は、あまりこういった外出をしたことが無かった。彼と会うときは、お互いの家。どちらの家、という決まりはないけれど、あっちの家に行ったりこっちの家に来たり。だけど、最終的な彼の目的はいつも同じ。一夜を過ごして、だらだらとするだけ。だからプロポーズもあの時だったのだ。
 フローラはそわそわとしていた。お付き合いをしている男性と、このような青空の下で共に肩を並べて歩くことに。
「お待たせしてしまって、申し訳ありません」
 その言葉と共に現れたクリス、シャツにジャケット、そして黒の綿パン姿であった。
 一瞬、フローラが誰か来たのかわからなかったほどである。それに引き換えフローラは、無難なワンピース姿。その上に一枚、上着を羽織っている。髪型も仕事中は一つにまとめているが、今日はハーフアップにしてきた。少しでもデートらしい恰好をして欲しいという、国王の言葉をアダムから聞いたからだ。
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