国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「あ、いえ。私も今、来たところですから」
「いえ、あなたは待ち合わせの時間よりも30分も早く、ここに着いたはずです」
「え」
 それは事実である。クリスを待たせては悪いという気持ちと、初めてこういった外で歩くという行為に気持ちが昂ってしまい、待ち合わせの時間よりも早めに着いてしまったのだ。
「どうして、それを?」
 フローラは驚き、理由を尋ねた。
「私はあなたよりも10分前にこちらに来ていましたから。そして、あそこであなたの様子をじっと見ていました」
「え。そうだったんですか。気が付かなくてごめんなさい。その……、クリス様がいつもと服装も違っていて、雰囲気も違うので……」
「いえ。私もあなたに気づかれないように隠れていましたから」
 隠れていた、という言葉がフローラには気になった。
「早く来ているのでしたら……、お姿を早くお見せしてくれればよかったのに」
「私を待っているあなたを見るのが、とても楽しくて嬉しかったもので、つい」
「あの……。私、変ではありませんでしたか? クリス様をお待ちしている間……」
 フローラは両手で髪の毛を整えようとする。
「いいえ、とても可愛らしかったです」
 クリスが口にすると、またフローラの顔はみるみるうちに赤くなってしまう。本当につい最近まで彼氏がいた女性か、と疑いたくなってしまうほど、彼女の反応は初心だった。
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