国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
13.彼女の師
 仕事中であるにも関わらず、フローラの方から休憩時間に会えないだろうかという打診をされてしまったクリスは、有頂天になっていた。どのくらい有頂天かというと、わざわざそれをノルトに報告しに行き、呆れられてしまうほど。
 フローラは休憩時間が決まっているが、研究職であるクリスはわりと自由だ。研究に飽きたら休憩をするし、研究に没頭しているようなときは休憩すら取らない。
 それでも今日は、彼女がこの研究室を訪れるというので、それに合わせていろいろと準備をしてしまうほどだった。
 コンコンコンと控えめに扉をノックされた。
「はい」
 弾む心を抑えて、クリスは冷静に返事をした。
「失礼します」
 間違いなく彼女の声なのだが、今日はどことなく凛としていて芯が通っている声だった。扉を開けて姿を現したのは、騎士服姿のフローラ。そして彼女の後ろに控えている一人の男。
 その男の姿を見た時に、クリスの心がザワザワとし始めたのだが、どうやらその男の年は彼女とはずいぶん離れているように見える。
「クリス様。お忙しいところ、お時間を割いていただきありがとうございます」
「いいえ。あなたのためでしたら、いくらでも時間を割きますよ」
 言い、立ち上がるクリスはとても柔らかい笑みを浮かべていた。そのクリスの姿を見てぎょっとしたのは、フローラの後ろに控えていた男性、つまりブレナンだ。
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