俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する 〜その後のエピソード〜

初めての会社訪問

(果穂side)

夕方、
果穂はお店を片付けて一度キッチンカーでマンションに帰る。
バタバタと出かける支度をして、身だしなみをチェックする。

左手の薬指には翔から貰ったダイヤの婚約指輪をはめる。

翔の会社に行くなんて、なんてハードルが高いんだろうと内心ビクビクしていた。

きっと洗練された素敵な大人な人達が働いている筈。
私なんて田舎者がウロウロしていたら、翔さんに恥をかかせてしまう。

せめて見た目だけでもちゃんとした、落ち着いた大人に見られたい。

先週、翔さんと出かけた店で袖口と胸元がレースになった黒いワンピースを買ってもらった。

ちょっと背伸びし過ぎた感があったが、
彼が似合っていると言ってくれたから決めた。

でも、何を着ても似合っているって言うからまったく参考にはならなかったのだけれど…。

しかも何着も買おうとするから、
慌てて一着だけをお願いした。

それなのに、後日お店から宅配で他の洋服が届いてびっくりした。

金銭感覚の違いは、やはり御曹司なんだなぁと実感するところでもある。

だけどコンビニのおにぎりも好きだし、
街でよく見る牛丼屋さんも嫌いじゃ無いと言う。
ハンバーグやカレーも大好きで、
夕飯で食べたい物を聞くとほぼ、このどちらかを言ってくる。

東京に来て、半年近く同棲しているけれど、
やはり、普段から隙が無く完璧な人。

休日もお兄ちゃんみたいにゴロゴロしないし、靴下なんかを脱ぎっぱなしには決してしない。
時間があればジムやジョギングをするような、健康的な日常を送っている。

夜のお誘いも、私がお店を出す前日は必ず避けてくれるし、体調や睡眠も気にかけてくれる。

初めは私もちゃんとしなくちゃと意気込んで、土日の朝でも同じ時間に起きて、朝ご飯の支度をした。

でも、2週間目辺りに見抜かれた。

『そんなに頑張らなくていい。
果穂はゴロゴロするのが好きなんだろ?
休日くらい、ゆっくり寝ててくれていいし、家事もしなくていいから。』
そう言って、私を甘やかす。

彼の唯一のマイナスポイントは、
私に過保護過ぎると言う事くらいかもしれない。

そんな事を考えていたら、タクシーは翔さんの会社に到着する。
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