断る――――前にもそう言ったはずだ

7.三年後、二人の朝

 カーテンから差し込む柔らかい日差しに、モニカはゆっくりと目を開ける。


「――――おはよう、モニカ」


 その途端、頭上からぶっきら棒な声音が降り注いだ。ぼんやりとした視界のまま「おはようございます」と挨拶を返す。すると、声の主――――エルネストはベッドからゆっくりと立ち上がった。
 彼はとっくの昔に起きていたらしく、テキパキと朝の準備を始める。未だシーツに包まっているモニカとは大違いだ。


(昨日よりも早く起きたのになぁ……)


 どう足掻いても、彼より早く起きることはできない。そんなに早く起きているなら、モニカの起床を待たずに準備を始めればいいのに――――そう何度も勧めたけれど、彼はその度に『必要ない』と一笑に付した。


 エルネストが寝室を出た後、侍女たちを呼んで、モニカも朝の準備を始める。
 手早く着替えを済ませ、モニカは朝食の席へと急いだ。


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