君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~

運命のマスカレード

マスカレード当日の朝。
ユリウスはエルマーとともにハートシードへと出発する。
この日のために必死に仕事をさばいてきたので寝不足ではあったが、
ジゼルに逢えるかもしれないという期待がそんな眠気を吹き飛ばしていた。
エルマーもエルマーで、少しミーハーなところがあり、
ユリウスに負けず劣らずのはしゃぎっぷりだ。

「マスカレードが始まったら、基本的に別行動でお願いします。」
エルマーが改まってユリウスにお願いする。
「仮面で素顔を隠して男女が出会うんですよ。ドキドキじゃないですか。俺も健康な男子ですから、素敵なレディとアバンチュールを楽しみたいです!」
キラキラと瞳を輝かせて、エルマーは大胆な発言をする。
「だから陛下も、私に気兼ねなく初恋の姫君と甘い夜を過ごしてくださいね。」
(ったく、こいつはイチイチ一言多いな。)

ハートシードには夕方に到着し、
ユリウスとエルマーは招待状をくれたウィリアムに挨拶に伺った。
年に一度のお祭りに王都は活気に溢れていたが、
王城内も8時から始まるマスカレードの最終準備で大わらわだ。
「ユリウス殿、よく来てくれた。騒がしくて、すまないね。年に一度のお祭りだから存分に楽しんでいってくれ。何しろ無礼講だから。犯罪を犯さない限り、今日のことを咎めるものはいないよ。」
ウィリアムはユリウスに近づくと、ユリウスだけに聞こえる声で囁く。
「君が探しているだろう姫君は、会場のどこかにいるよ。タイムリミットは4時間。頑張って見つけるんだ。」
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