見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
私を変えてくれる二人
「待たせてごめんね。あそこでも大丈夫?」

お兄さんが指差した方を見ると、それは私の家の近所にもある24時間営業の全国チェーンのファミレス。

「はい、大丈夫です」


中に入ればやはり見慣れた店内で、少し気持ちが落ち着いた。


ドリンクバーで温かい飲み物を持って席に着くと、私はまずお兄さんに頭を下げて謝った。

「あのっ…先ほどは大変失礼しました。…いきなり睨んだり…泣いてしまったりして…本当にすみませんでした」


「いや、気にしてないよ。…顔を上げて?」

そう聞こえてゆっくり頭を上げるとお兄さんと目が合い、ふっと笑むと話し始めた。

「俺はさっきのスポーツクラブで店長とインストラクターやってる、九十九 伊織(つくも いおり)、30歳、ちなみにバツイチで独身。君は?…あぁ、言いたくなきゃいいよ」

はい、と渡された名刺を見たら


スポーツクラブ 
 ソレイユダイヤモンド 横浜中央店

店長  九十九 伊織


とあって、ぽそりと「きゅうじゅうきゅう…」って言ったら「それで、つくも、って読むからね」と優しい顔で笑われた。

よく見たら漢字の下にローマ字でも書いてあった。

つくも、いおり、さん…

お洒落な名前だなぁ。

「九十九さんのお名前って芸能人みたいですね」

素直にそう思ってぽろっと言ったら更に笑われた。
でもバカにするような笑い方でなくて「ははっ、ありがとう」と、とっても楽しそうに笑う。


あっ、そうだ。自分のこと言うの忘れてた。

「えっと、桐生 乃愛といいます」

別に言ったところで一期一会の人なんだし、いいよね。
聞かれたから漢字も教えた。

「乃愛ちゃんか。可愛い名前だね。それで……どうした?何があったの?」

さっきまでの明るい笑顔ではなく真面目な顔の九十九さんにドキッとした。

…この人は本当にちゃんと聞いてくれようとしてる。

そう思ったら〝嬉しい〞という感情があることに気づいた。


そっか。
私、きっと誰かにすがりたかったんだ…

今だけ…九十九さんにすがって…話して…聞いてもらおう。

思い出すのは辛いけど…でもいつまでも避けてはいられないことだから…

覚悟を決めて話し出した。

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