Magic Academy ~禁書に愛された少女~
「我、汝を欲す」

そらが最初の呪文を呟く。

「我が名はそら。我、汝に命ず」

続けて呟くと、ふと、頭の中を声がしてきた。

【本当に、僕達と契約を結びたいの?】

少年の凛とすんだ声に、そらの詠唱が一瞬止まる。近くで見守っていたドルイドたちは首を傾げた。


なに、今の声。


動揺が隠せない。思わずそらの目が泳いだ。

(止まるな、続けるんだ)

シークの声が聞こえてきた。シークに言われるまま、そらは詠唱を続けた。

「如何なる時も、我が汝を欲するとき、汝は我の盾となり、刃となり、頭脳となり、体となり、その全てを我に捧げよ」

【私達にどんなメリットがあるの?】

今度はかわいらしい女の声。明らかに、近くにはその声に該当する女の子がいない。

そらは詠唱をやめて、思っていることを、素直に口にした。

「話し相手になって欲しい、辛いときは一緒にいて欲しい、楽しいことは一緒にしたい」

契約の呪文とは違う何かを言っている。アッシュ達は顔を見合わせている。

「全てを捧げてくれなくていい。ただ、困ったときは力を貸して欲しい」

そう、そらが言い終わると、ぱぁっと魔方陣が光りだした。さっきのアッシュの契約の時のようだ。

そらは思わず叫んだ。


「-----コントラクト!」


が、魔方陣には何もなかった。



し、失敗した…やっぱり……



そのとき、耳元でちゃりっという金属音がしたのに気づく。そして、あけた覚えのないピアスが、耳についていた。

「…なにこれ」

右には黒い羽、左には白い羽をしたピアス。覚えのないピアスにそらはただただ首を傾げていた。
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