焦れ恋オフィス

離れない




翌朝、夏基は仙台に行く荷物を詰めた小さなスーツケースを転がしながら出勤した。

家を出る間際までずっと

『大丈夫か?』

『何かあったらすぐに電話しろ』

と何度となく言い続けていた。

『夏芽の心配がなかったら連れていくのに』

ぼそっと呟いた夏基の言葉が嬉しくて、ほんの少し温かくなった。

日曜の晩には帰るけど、一か月も会えないような寂しさを抱えながら見送った。

寂しさと不安の原因はきっと…。

瑶子さんに会う事。

その事については何も言わないし聞かない私達。
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