粉雪2-sleeping beauty-
俺、もぉ良い加減、マジで疲れてたんだよ。


俺が何言ったって、結局お前は自分を追い込むんだ。


全部一人で抱えて、俺なんかに頼ろうともしない。


“じゃあもぉ、俺なんか居なくても良いだろ?”って。



こうやって少しずつ、歯車は狂っていったんだ。


全部が全部、悪い方向に進んで行ってた。



今考えたら、隼人さんの思惑通りだったのかもしれないな。


だけど、俺自身が決めたことだ。


後悔なんて、してねぇから…。


一つだけ後悔してると言うなら、

それは俺自身の手で、お前を幸せにしてやれなかったことだよ。






『…ねぇ、マツ…。
頼みがあるんだけど…。』


短くなった煙草を灰皿に押し当てながら、千里はこちらに顔を向けた。



『…何か、お風呂の水道壊れちゃってさぁ…。
ご飯作ってあげるし、マツんち泊めてよ。』


「―――ッ!」


千里は困ったように笑っていた。



『管理会社に連絡するの、忘れててね?
今からじゃ、電話も繋がらないじゃん?』


何も言わない俺に、千里は言葉を並べ続けた。



あぁこれは、独りであの部屋に戻るのが怖いのか。


じゃあ、俺が居る意味も、少しはあるのかな、って。




「…好きにしろよ。
別に、直るまで居れば良いから。」



お前の不安が取れるまで、ずっと居れば良いよ。



『ホントに?!』


千里の顔が、急に明るくなった。


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