砂のお城

優花

―一瞬、晴かと思った。

中学最後の春休み。

私は、こっちに越してきて仲良くなった親友の静と駅前に買い物に来ていた。

「静ー!」
「優花遅い!おかげで、変な奴にナンパされたじゃない」

静は、年齢よりもすごく大人っぽく見えるせいで、よくナンパをされる。

本人は男嫌いで、ナンパ男によく毒舌を浴びせているのだけど。

「ごめんね、ちょっと駅で知り合いに…」
「会ったの?」
「ううん、似てる人がいたの」

改札口、人混みの中に見つけた幼なじみに面影に似た少年。

まさか、こんなところに晴がいるわけないのだけど。

…つい、追いかけてしまったんだ。

すぐに、姿を見失ってしまったけど。

しばらく、その場で立ち尽くしてしまい、静との約束に遅れていることに気がついて走ってきたのだ。

「優花が遅れるなんて、理由があるとは思ったけど、心配したわよ」
「ごめん…」
「いいわ。無事だって、わかったしね!ほら、買い物行こ」
「うん!」
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