記憶 ―夢幻の森―
9・迷いの森

9・迷いの森



花畑で露をくみ、昨日のようにじぃさんの元へたどり着いた。


――ザァ…

そう昨日と変わらず葉を揺らした。


『おや、ハルカとコンも行くのかい?』

「うん!」

「…だ、そうだ…」

呆れる俺に構わず、じぃさんは言う。


『うむ、与えられるだけじゃ駄目だ。自分から動かなくてはのぅ?ハルカ…』

もしかしたら二人を止めてくれるかもしれない、そんな俺の淡い期待は裏切られ、心の中で小さく舌打ちする。

じぃさんは長く生きているだけあって、その言葉は最も正しいものであり、これ以上何も言えなくなった。



「エウロパの山は遠いのか?月が重なるのは、いつなんだ?」

『それが、明日の晩なんじゃ。本来は遠い場所。しかし間に合う…』

「……?」

俺たちは互いに首を傾げながら、じぃさんの話を聞いた。



聞き終えても、俺の頭の中は疑問符だらけだった。


ゥワン…
『キース、俺ぜぇーんぜんッ分からないんだけどもッ!?』

「…俺も、実は精一杯だ…」

はは…と乾いた笑いをコンに返した。

< 87 / 221 >

この作品をシェア

pagetop