元気あげます!巴里編
ラストスパートですから。
セルジュと千裕とひかるの3人でお茶で祝杯をあげてから2日たちました。


夕方、ひかるが工房を出ようとしたとき、セルジュが千裕から預かった手紙をひかるに渡しました。

ひかるはすぐに、手紙に目を通すと、涙ぐんでいました。


「どうして、セルジュさんに手紙を預けて、私に直接言ってくれなかったの。」


「そういう顔を見たくなかったんじゃないか。
俺もそうなんだけどな・・・。損な役割を引き受けてしまった。

ただ、あいつは俺と違って肩に背負っているものがとてつもなく大きい。
記憶がなかった間、多くの社員を幹部社員にまかせっきりにしていた責任とか思うことがいっぱいあったみたいなんだ。

俺だって、ここや請け負ってるパーティー会場を仲間に押し付けっぱなしにして入院してたらって思うと、いてもたってもいられないしな。」


「うん。いかにも千裕様らしいっていうのはわかるけど・・・でも。」



「ひかるは千裕が責任とってる間にやらなくてはならないことがある。
それをやり遂げることがひかるのためになるし、千裕のためにもなるんじゃないのか?」


「そ、そうですね。千裕様は仕事でいつものように日本にもどってるだけですもの。
あっちには高田さんやご兄弟もおられるんだし・・・。

ごめんなさい、セルジュさん。
私、ここでしっかりパティシエの勉強を終えて、胸をはって日本にもどります。」



「おぉ。・・・泣きごと並べて落ち込んでたら、作業を打ち切って俺の嫁さんにしてやるからな。はははは・・・。」


「セ、セルジュさん・・・。いったい千裕様からどういう指示があったんですか?
退院するときもなんかこそこそと2人でしゃべってたみたいだし。

最近のセルジュさんって千裕様に似てきた気がして、なんだか私、妬けちゃうかも。」



「ははっ、その気はないって。
そうだな。ひかるがとりもつ縁ってやつ?

千裕が記憶なくして、命も亡くなった場合はひかるを俺にたくしたいと言ったんだ。
もちろん、俺はそんな頼みは断ったけどさ・・・。

その逆もありだと思うんだ。
俺に万が一のことがあったら、千裕にみんな頼みたいと俺も思うから・・・。
あれ、やっぱり変な関係かな。」




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