花の魔女
求婚
村の中心を流れる小川にはきれいな水が流れ、人の住むところではにぎやかな声、森ではたえずのどかに小鳥がさえずっている。
羊飼いが笛を吹き、羊が集まっていく。
そんな風景を持つこの国の既婚女性は頭に白いベールをかぶる習慣があり、女性たちの大半はこのベールをかぶっている。
こののどかなベルナーマの国の北の村に、年頃の娘、ナーベルが暮らしていた。
ナーベルは村でただひとりの黒い髪を持つ娘だ。
目はぱっちりと大きく、ピンク色の可愛らしい唇を持っているため、村で密かに人気を集めている。
ナーベルはその日、木こりの家のそばにある丸太が積み上げられている場所に座り、小鳥のさえずりをきいて午後を過ごしていた。
風が吹くたびに黒い髪がふわりと揺れた。
ナーベルは目を閉じて、風が通り過ぎていくのを感じた。
「ナーベル!」
そのとき、自分を呼ぶ声が聞こえてきて、ナーベルは目を開けた。
「アイリーン」
向こうのほうからこちらに向かって駆けてきたのは、隣の家に住んでいるアイリーンだった。