花の魔女
アイリーンは栗色の少しくせのある長い髪をひとつにまとめて、淡い水色の服を邪魔そうにしながら走ってきた。
彼女はナーベルの隣にひょいっと飛び乗って腰を下ろした。
「何やってるの、こんなところで。暇な人ねぇ」
ナーベルは少しむっとして、ぷいとアイリーンから顔を背けた。
「ケンカ売りに来たの?」
ナーベルのそんな様子にアイリーンはおかしそうに笑ってから、朗報があるの、と興奮ぎみに話し始めた。
「驚かないでよね。この村に、都から貴族の方がおみえになったの。結婚相手を探しにこの村へ来たんだって!ねぇ、どう思う?」
「どうって……」
ナーベルはアイリーンの剣幕に少し身を引かせた。
「どうしてわざわざこの村に来たの?都だったら結婚相手なんて腐るほどいるでしょうに」
アイリーンは少し考えこむような顔をした。
人差し指を口元に当てるのが彼女の癖だ。
「確かね、確かよ。この村に目当ての女の子がいて、その子を探してるそうなの」