花の魔女
リスははじめぴくりとも動かなかったが、ナーベルの送りこむ生気が体をめぐると、丸い目をぱちりとあけ、ぴょこんと起き上がった。
「やったわ!」
リスは喜ぶナーベルに、お礼なのか肩までかけあがってきてナーベルの頬にちゅっとキスをした。
「やるな、お前」
ジェイクは何を褒めたねか、とりあえず感心していた。
元気になったリスはナーベルの肩からかけおりて、小さな足跡を点々と残して去っていった。
そのようすを見つめてナーベルは微笑んでいたが、ふいにはっとした表情をし、ジェイクを振り返った。
「これだわ!ジェイク、ちょっと試させて」
いきなりナーベルに腕を掴まれ、何が何だかわからないジェイクは戸惑った。
「おい、何する気だよ?」
ナーベルは答えず、無言で目を閉じている。
ジェイクは怪訝にナーベルを覗き込んだが、同時に体があたたかくなっていくのを感じた。
次第にジェイクの体に力が漲り、それは冬になる前と全く変わらない状態にまでなった。
ジェイクが驚きに身を固めていると、ふぅ、と息を吐いてナーベルがジェイクの腕を解放した。