偽りの結婚



「その王子の妃になろうとしているのは誰だい?これから夫婦になる僕たちが、そんなよそよそしくてどうする」


すでに夫を演じる準備が出来ている貴方と違って、私はまだ心の準備が出来ていないのよ、と心の中で思う。

けれど、この先この調子ではすぐに仮面夫婦だということがばれてしまうのは必須だ。

そうなると、またアリアが婚約者として白羽の矢が立つだろう。

それは避けなくては……





「今日からよろしくお願いします…ラルフ」


最後の方は小さな声になってしまった。




「あぁ、こちらこそよろしく、シェイリーン」


そう言って満足そうな笑顔で再び手をとった。





一方は己の自由を求めて。

そして、もう一方は友の自由を願って。


“偽りの結婚”の密約は交わされた。



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