捨て犬とあたし

キス。

あたしは泣きながら

家の中に入った。

そして

玄関でしゃがみこんだ。

溢れて零れる涙は

ポロポロと下へ落ちてゆく。

そのたびに

また翔との思い出が

よみがえってくる。


『…ッ…ッッしょぉッ』


そのとき

リビングへ続くドアが開いた。

涙でグチャグチャの

瞳を服でぬぐって

ドアのほうを見ると

昨日拾った捨て犬くんがいた。

彼は、まるで

「どうしたの?」

と問いかけるように

こっちを見ていた。

あたしは

泣くのを無理やりとめた。


『…どうしてまだいるのょ…』


あたしが問うと

彼はゆっくり近づいてきて

彼もあたしと同じように

しゃがんだ。

そしてあたしの頭を

ぐしゃぐしゃっと撫でた。


『…なに…』


彼はあたしの

言葉をさえぎってこう言う。


「泣きたいなら、

 泣けばいーじゃん」


彼はやさしく笑いかけた。
< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop