おしゃべりな百合の花
 ようやく観念したのか、重い鉄扉は10cmほどゆっくり開かれ、ドアチェーン越しに美百合が顔を覗かせた。


 龍一は美百合の姿を確認した途端、幸福感に似た安堵に包まれ、思わず笑みがこぼれた。


「何の用?」


 無愛想に、責めるように美百合は言った。


「いや、いるならいいんだ。」


 美百合を納得させるだけの、ここへ来た理由が思い浮かばず、龍一は美百合を混乱させるであろう、不可解な言葉を発した。


「何言ってんの?意味わかんない。バカじゃないの?」


 そんな美百合の罵りは、当然の報いだと真摯に受け止め、聞き流す。


「俺、ここに居るから、何かあったらすぐ呼べ。」


 一方的に、目的のわからない意味不明なことを言われ、益々美百合は怒りを露わにし、


「だから、何言ってんのよ?迷惑なの、さっさと帰って!」


 そうキツイ口調で言うと、扉は乱暴に閉められた。


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