楽園の炎
第十九章
次の日は、朝早くから朱夏は落ち着きなくそわそわと、部屋の中を歩き回っていた。
早く起きたのだから、午前中の稽古に参加しようかとも思ったのだが、とても稽古に集中などできない。

今日は、憂杏が皇太子と会うのだ。
いつ、とは聞いていないが、正確な時刻がわからないからこそ、目覚めたときからずっとそわそわしている。

「朱夏様。歩き回っても、何もわかりませんよ。せめてお座りになっては?」

部屋の掃除をしていたアルが、呆れたように声をかける。

「そうなんだけど。ああ、どうなるのかしら。ううん、きっと人柄は、お認めくださるはずだけど・・・・・・。何せ、おっさんだもの~」

アルに促され、すとんと椅子に座ったものの、朱夏はきょろきょろと辺りを見回してみたり、頭を掻きむしってみたり、落ち着かない。

今は桂枝も炎駒について、皇太子の元に行っている。
桂枝も、落ち着かないだろうなぁと思いつつ、朱夏はアルが淹れてくれたお茶を飲んだ。

「憂杏、まだ来てないのかしら。ああ、それにしても、桂枝も娘ができて、嬉しいんじゃないかしらね」

「朱夏様も、桂枝様の娘みたいなものじゃないですか。そう考えたら、桂枝様は、嬉しいことが立て続けですわね。息子さんも、朱夏様もご結婚なのだし」

あ、と朱夏は、お茶のカップを置いて、アルを見た。
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