楽園の炎
第七章
それから二日後。

まだ日の高い真っ昼間に、朱夏は地下牢に忍び込んだ。
夜は警備が厳しくなるため、昼間のほうが、都合が良いのだ。

ユウは地下牢の最奥、最も厳重な鍵のかかった牢にいる。

「ユウ、大丈夫?」

この牢は、大罪を犯した者を入れるため、傍には他の牢がない。
罪の重い者は、裁可が下るまで、他の者との交流を一切絶たれるのだ。

ここまで来れば、他の者に見つかることも、話を聞かれることもないだろうが、見張りの兵士が来るかもしれない。
一応声を潜めて、朱夏は牢を覗き込んだ。

「朱夏?」

薄暗い牢の中から、低い声が返ってくる。
ややあって、ごそごそと奥からユウが顔を出した。
随分汚れている。

「やっぱり地下牢は、そう簡単には抜け出せないみたいだな。汚れただけで、収穫はなかった」

立ち上がる程の高さはないので、中腰で身体を叩きながら、ユウはぐるりと牢の内部を見渡した。

汚れてはいるが、見たところ、傷はない。
暴行を受けたりしたわけではないようだ。

ほっと息をつき、朱夏は牢のすぐ前に座り込んだ。
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