オフィスの甘い罠
10―Brand New Day
     ☆☆☆☆☆



「イヤだわ、細川さんったら。

あたし別にそんな悪女じゃ
ないわよ」



「いやいや、何を言う!

それだけ美人で前は銀座に
いたってんなら、面倒見て
くれるパトロンなんて
いくらでもいたんじゃ
ないのか〜?」



ほろ酔いの客が調子のって
バカみたいなこと言ってる
のを、あたしは愛想笑いを
浮かべながら聞き流してる。



(くだらない男。

ったく、とっとと
帰っちゃえってーの)



心の中では冷めたことを
思いながら、口先では
そいつの喜ぶことばっか
しゃべって、飲ませて。



単純な男はすっかり
ご機嫌な酔っ払いに
なって、日付の変わった頃
やっと席を立ってくれた。



支払いを済ませた客の体を
もう一人の女のコと支え
ながら、店の外まで送り出す。
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