6月の蛍―宗久シリーズ1―
記憶2
私は夫に内緒で、電車で一時間程の距離にある総合病院へと向かった。



夫に伝えれば気に病むだろうし、それ以上に……私は怖かった。







もしも……子供ができない身体だったなら……。




夫のそばに、居られなくなるかもしれない。






そんな恐怖感が、私を支配していた。










その総合病院には、知り合いの産婦人科の医師がいる。



正確には、夫の友人。






「やぁ、久しぶりですね。咲子さん」

「お久しぶりです……」



訪れた私に、その産婦人科医は、白衣の襟を直しながら笑顔を返してきた。









だが私は、夫の友人である金森に対し、好意的な気持ちになれた事は無かった。



目付きが嫌なのだ。



まるで品定めでもするかの様な舐める視線が、私は嫌だった。


夫とは正反対の、不誠実さを感じる。


なぜ夫の友人なのかが不思議なくらいだ。





だが、背に腹は変えられない。


私は、藁にもすがりたい気持ちだったのだから。













「不妊治療ですか?」


「ええ……」



私は、医師である金森に治療の相談をした。
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