ありのまま、愛すること。

おはぎの味

生前の母が、父から映画コマーシャル会社を任され、社長業に専念し始めたころから、同居していた祖母・糸が、渡邉家の家事を一手に引き受けることになりました。

そのころから、わが家で出てくるおやつは祖母がつくるおはぎばかり。

近所の友だちはケーキやクッキーなどをおやつに食べていたので、私にはうらやましく思えたものです。

でも祖母のおはぎは大変おいしかった。

料理もとても上手でした。

得意なのはイワシのつみれ汁。

骨を1本ずつ抜いて、すり鉢ですり、出汁もていねいに取って仕上げる手間のかかったものでした。

祖母はお洒落も大好きで、季節に合わせた和服に好みの帯をしっかりと締め、髪もキチンと結いあげます。

そして、いまでいうデイサービス(通所介護)に通い、日本舞踊を踊っていたのです。

家事もしっかりこなしたうえで、祖母は自分の時間を有意義に、とても楽しそうに過ごせる人でした。
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