ハッピーエンド
プロローグ
夕闇が支配する空間が一瞬引きつったように凍りつき、続けてオレンジ色の炎が音も無く唐突に立ち上がる。

衝突の弾みで横倒しになった純白のスポーツカーは、横滑りに道を逸れ、ガードレールをなぎ倒しながら防風林に突っ込んだ後ようやく止まった。

エンジン部分から、まるで意思を持ったかのような炎が瞬く間に湧き上がり、弾けながら嫌な音を立て始める。

もう1台、フロント部分を大破した紺色の外国車は、その頑丈なボディーのおかげか数回スピンした後、反対方面のガードレールに軽く当り、路上に立ち尽くすように止まった。

エアバックの影から崩れ落ちるように車外に出た人影が這いながら路肩に避難する。顔面を血にぬらし、長い髪までも震わせながら女はガードレールにもたれかかった。
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