カナリア鳴く空
季節は夏を終え、秋を迎えた。

日々高くなって行く空に、冬の訪れを感じる。

私と優衣は、まだ関係を続けていた。

朝香のいない夜――と言っても毎日だが、肌を重ねる。

それがもうすっかり習慣化していることには、特に動じなかった。

むしろ優衣と肌を重ねないと、禁断症状に苦しむほど。

優衣との時間は、私の中では習慣になっていた。


その日、私はリビングでトランペットの手入れをしていた。

もうすぐ秋の演奏会が始まるからだ。

「丁寧ですね」

その声に視線を向ける。
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