使者の黙示録
「しかし」


男は言葉を続ける。


「親父が生きていたときに比べれば、大きな取引はなくなったがな」


男の父親は、裏社会ではかなり名の通った人物であった。

大きな影響力をもっていたが、3年前に亡き人となった。


顧客の男は遠くを見るような面持ちで、その当時をふり返る。


「あの親父が、まさかあんな病で逝くとはな」

「確か、ラドレア病でしたか」


ラドレア病――

近年、世界のいたる国々で確認されている新種の病だ。

患者数は多くはないが

発病すると必ず1週間以内に命を落とすという、絶対に助からない現代の死病である。

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