わかれあげまん
迷子のココロ
“起きろ。”
と誰かに優しく身体を揺すられたような感覚がして、柚はぼんやりと目を開けた。
走行する車のエンジンの、規則正しい回転音。
はっ。
と慌てて身体を起こすと、濃紺色のダウンジャケットがズルっと足元に滑り落ちた。
哉汰の銀のバンはいつの間にかまっすぐに伸びた広い車道を快調に飛ばしていた。
しかもすっかり夜が明けている。
身体を揺すられたと感じたのは、走行する車が時折軽くバウンドするせいだったのか。
「わっ」
慌てふためいて声に出し、となりの哉汰を見ると、悠然と前を向いたままハンドルを握っている。
「…な、何?ここどこ?ど、どうなってんの?」
覚醒間もないせいで何だか質問の意味が明らかにおかしい柚に、哉汰はクスッと笑い、返した。
「どこって、車の中。」
「そそそれは分かってるけどっ」
「もうすぐ8時半。あんたには悪いけどこのまま研究所に向かわせてもらう。バイト遅刻したくねーし。」
…
あ、
あ、そっか、今日って土曜だから
研究所のバイト…
って、…