わかれあげまん



ううん、まさか。…


けど、…




そっと寝返ると哉汰は既にまた向こうを向き、ゆっくりと規則正しい寝息を立て始めていた。


彼の背中を、柚はじっと見つめた。


細身なわりにしっかりした広さの男っぽい背中なのにどこか無防備で愛らしく、柚は密やかに苦笑をこぼした。








藤宮くんて、やっぱり少し変わってる…

だって、…


色恋抜きであたしに構ったって、何の得にもならないのに。

なんで…


何でそんなに優しくするの?






答えの出ない、いや出してはいけないそんな疑問がいつしか柚の頭から渡良瀬を追い出して。


ヒーターの効き始めた車内の心地よい温度と、低く唸る車のアイドリング音に包まれ、やがては柚も重い瞼を下ろし、


深い眠りに落ちて行った。



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