太陽と雪

本業

元の通りのワンピースを着て、布団に潜る。


すると。


「あ……彩お嬢様……」


矢吹が、申し訳なさそうに、ドアから顔だけをを出した。


何よ、もう……。

さっき呼べば良かったのではないの?

何だか申し訳ないので、矢吹の近くまで行くことにした。

フラつかないよう、ゆっくり歩を進めた。

「お休みになるところ申し訳ございません」


真面目すぎる性格のためか、彼の口から出てくるのは謝罪ばかり。


「もう!

矢吹!

謝罪はいいから、早く用件を言いなさいよ。

ビジネスの世界では結論ファーストよ。

何よ、何なの?」


「先程、旦那さまから内線電話がありました。

彩お嬢様の具合がよろしいようでしたら、連れてきてほしいと言われたもので」


「わかったわよ。
私、まだフラつくんだから、ゆっくり歩いてね」


私なりの快諾の返事に、承知いたしましたと丁寧に腰を折りながら言った矢吹。

どうせまた……彼氏でも作らないのかという話でしょ。


心の中でそう呟きながら、螺旋階段を降りてパパの部屋に向かう。


階段なんかはフラつくから、矢吹に甘えてお姫さま抱っこしてもらった。


私なんて軽々持ち上げちゃう所に、

男性っぽさを如実に感じて、胸の高鳴りと共に体温が上がった。


「ごめん……

ありがとう矢吹」


「お礼を言われるほどのことはいたしておりません。

私は彩お嬢様の執事でございますから、これくらい当然でございます」


何よ……カッコつけちゃって。

まあ、カッコイイっちゃカッコイイけど。

危うく、好きになるところだった。

恥ずかしいから、矢吹には言わないでおく。


パパの部屋のドアをノックして部屋に入る。

重いドアは矢吹が開けてくれた。

矢吹はパパに向かって丁寧に頭を下げてから後に続いた。
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